「つくる」と「つかう」の考え方

あるものをつかって、足りなければつくって。まちのつかいこなし方の考え方。

山崎亮さんの講演会に行ってきた

 明石アワーズホールであった山崎亮さんの講演会に行ってきた。募集では450名定員になっており、そんなに埋まるんかな?と思っていたが、なんのその。この講演会は明石協働のまちづくり講演会として、明石市内の自治会・小学校区からキーマンが集まっている会でした。

客席を観察する

 白いTシャツにハーフパンツ・足元はNewBalanceで決め込んだ山崎さんは、登場するやいなや「私、いま夏休み中なんです。午前中は事務所でヨガをしていたので、すごくリラックスした状態です。ま、そんなことは関係ないですね」と一言。そして、「今日は話すことを決めてきていません。最新式のパワーポイントをもってきたので、みなさんの様子に合わせて話します。」と言いつつ、会場の様子をながーく観察していました。最終的に、3つのトピックで75分が過ぎて行きました。

1.2240歳プロジェクト(秋田)

2.町内会の歴史的整理と現在の動向

3.観音寺プロジェクト(香川)

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コミュニティデザイナがラーニングピラミッドから話し始めた

 驚いたのが最初のスライド。ここ数年、教育現場でよく目にするラーニングピラミッドから導入が始まったのです。そして、大学の教育システムのヤバさも「このピラミッドからすると、授業を聞いてるだけの学生は学びが少なく、授業をしている先生がどんどん賢くなる仕組み」と一刀両断。まさにその通りなんです。

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引用:https://jp.pinterest.com/pin/459437599458577094/

 そんな中、2240歳PJは、住民が高齢者(=先輩)にインタビューして企画展をするというもの。地域内・世代間で学び合いを起こすことによって地域コミュニティを想起させる内容でした。

年貢・納税の仕組みから共同体を捉える

 その流れで、町内会の歴史的整理が始まります。江戸時代、年貢は集落ごとに決められていたため、嫌だろうがなんだろうが、共同体としての責任をもっていた。それが明治に入り、納税が世帯単位になった。ここが共同体が崩れた一つの契機。更に戦後GHQによってPTAがつくられ(町内会から教育をはぎ取る)、福祉を剥ぎ取られ、現代になると「町内会って一体何してるの?」って存在になってしまっている。もう一度それらを町内会に戻すことが、コミュニティのきっかけとなる。そのためには、若い人に町内会をきっかけとした成功体験をしてもらうといいんじゃないか?と現代への提示もありました。

 更に、人口減少にも触れ、これからは人口の取り合いになる。ただ人口を増やすだけじゃなくて、「活動人口」を増やしていく必要がある。昔は、集落の道は自分たちであつまって作っていたのに、いつしか税金を払っているのだから行政がやれ!みたいな暴力的な市民を作ってしまった。自分たちのくらしは自分たちでつくるんです。なんて、鋭い指摘も。縮退していくことが悪いことでは無く良いことになるように「縮充」を目指してはどうだどうか?と、新しいキーワードも。

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最後は落語

 更にその流れで、高齢の商店主と若者が活躍し始めた観音寺PJ。「これは笑いを入れますからね」と話しはじめてからの軽妙な語り口は、完全な落語。シャッター街になった商店街の店主たちを焚き付けて、気づけば新しいコミュニティができ、shop in shopが生まれていく。もともと山崎さんが商店街のまち歩きをした時に、【下着屋×ケーキ屋】、【クリーニング屋×餃子屋】という変な掛け算を見つけたことから始まっていくのです。 

studio-L | project | 観音寺まちなか再生プロジェクト

コミュニティから教育・学びへ

 今回は教育と健康について触れる事が多く、いまの山崎さんの興味が垣間見えました。教育の話の中では、学校教育・地域教育・家庭教育の3つで、教育が成り立っている。でも、最近は家庭教育が塾に置き換わってしまっている。地域教育は成り立たない。教育の責任が全ての学校教育にいっているのは、おかしいのではないか?という至極まっとうな問題提起がありました。

 教育現場で働く者として、学校教育(公教育)の限界は明らかで、他のコミュニティと交わり合いながら、学びの場を広げていくことが非常に大切だと実感しています。ただ、それを良しとする学内の価値転換と、コミュニティの度量が必要と感じています。明石、東播磨について言えば、コミュニティ側は丁寧に整えられてきていて、あとは学校がその考え方を持ち、勇気を持って学びの場を広げられるか、だれが動かくがキーになってきています。

常に観察する

講演会中、「今日は笑いがない時間を過ごしてもらってすみませんねー。それより皆さんホントにすごい」とお客さんを褒めてみたり、「今日は若い人が多いですねー」と会場を揺すってみたり、常に観察し空気をつかんでいく姿は、さすがのデザイナーでした。各プロジェクトの登場人物のキャラクター立ちもさることながら、それを正しく理解し再演できる山崎さんが、どれだけまち・ひと・出来事を観察しているのかがよくわかりました。